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   石膏室


上野・谷中界隈は、戦火に遭わなかった貴重な風俗遺産で、古き良き時代のTOKYOが残っている。

鶯谷から降りて、上野のお山の古い町並みを、見学するのも面白い。
毎年、上野のお山に、大勢の花見客が押しかけ、陣取り合戦が繰り広げられるが、
お江戸時代からの風物のなごりだろう?

芸大に入学して、校舎の古い佇まいに、まず驚いたものだが・・・ 
なかでも、木造校舎の中程にあった<石膏室>という建物に、ど肝を抜かれた。

3階建て程の、天井採光の部屋に、見上げる程大きな石膏像が並んだ、巨大な空間があった。
実物大の、メジチ家の像<昼と夜>だの、実物大の騎馬像などの、さまざまな彫刻に圧倒された。

描こうと思えば、画架を持ちこんで描く事ができたのだが、あまりにもそびえ立つ巨大さに歯が立たなかった・・・
稀に、デッサンをしている生徒が居たが、余程の実力と自信のある生徒だったのだろう??
 
わたし達には、部屋の天井が総ガラス張りの、人気の少ない空間は、
公園気分で、隠れたデートの密会所??だった。

ここの石膏像は鑑賞用で、長い歳月による適度の汚れが、石膏像に実物のような風格を付けていた。
此れに比べたら、教室での教材に描いた、アグリッパ、マルス、カラカラ、e.t.c.みんな米粒みたいなものだったが、
それでも学校の、教材用石膏は、先輩たちの手垢と、年月が造った貫禄で独特の<重み>があった。

真っ白い石膏像… あれはオモチャだ
最近の都市開発をみていて思うのだが、オモチャの石膏像を量産している!!



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